最近の中国の高品質な3Dゲーム、特にガチャゲーで主人公用の新スキンが実装されないことを不思議に思っている人もいるかもしれません。
原神や崩壊:スターレイル、鳴潮のようなゲームでは、キャラクターの新スキンが実装されることがありますが、主人公だけはいつも同じ服を着ています。
しかし、日本のゲームを遊んでいる人は違和感が覚えるかもしれません。
例えば、「ペルソナ」シリーズでは、主人公の服も変えることができ、DLCとして様々なコスチュームが売られています。
こういうことを中国のゲームでもできないの?と思う人も多いはずです。
中国の3Dゲームでスキンが実装されない理由
新スキン実装にはかなりのコストがかかるが、主人公だと有料で売りづらいから
というのが要因です。
新スキンを作るのは新キャラを作るのと同じ
新スキンは一見、服が変わっただけのように思えるでしょう。
しかし、3DCGではキャラクターの身体と服はくっついています。
3Dのキャラクターに服を着せているのではなく、服を着た状態のキャラクターとしてCGがモデリングされています。
新スキンを作ると、まず、新しい服装の形状に合わせてボーンと呼ばれるものを組む必要があります。
ボーンがないとキャラクターが動いた時に服が揺れたりしません。
例えば、スカートだったキャラクターがズボンに変わっただけで、異なるボーンを用意しなければバグってしまいます。
リギングという作業もあり、キャラクターの動きに合わせて服やアクセサリーが揺れるような設定をしなければならないのですが、これが非常に大変です。自然に見えるように調整しなければならないためです。

さらに、【干渉】も考慮しなければなりません。
新しいスキンが、キャラクターの髪や腕、足などにめり込んでしまわないように細かく設定する必要があります。
加えて、新しいスキンがゲームの仕様を満たす必要があります。
派手で細かい服装を実装しようとすると描画負荷が増えます。新スキンの時だけやたら動作が重いというような状況を避けなければなりません。
内部的には新スキンを作るというのは新キャラクターを作るのと変わりません。
カットシーンの問題
新スキン実装はカットシーンという問題も起きます。
カットシーンというのはゲーム中に挿入されるムービーです。ただし、リアルタイムレンダリングとプリレンダリングの2種類があります。
リアルタイムレンダリングムービーでは、主人公のスキンを変えたらムービーにも反映できます。しかし、映像がおかしくなっていないか全てのスキンで確認しなければならなくなります。
例えば、ズボンだったら問題ないが、スカートにするとスカートの一部が環境オブジェクトにめり込んでしまったり、他のキャラクターと干渉してしまうということが起きたりします。
特に椅子に座った時に、服が椅子から不自然にはみ出たりしているということは起こりやすいです。
プリレンダリングムービーというのは、カットシーンをリアルタイム処理せずに、事前に動画を作成しておき、場面が来たらその動画を流すという手法です。
プリレンダリングムービーではキャラクターのスキンを反映できません。
新しいスキンを装備したけど、ムービー中に反映されないのであれば、果たしてプレイヤーは価値を感じてくれるだろうかという懸念が生じるでしょう。
主人公はこの先も新しいカットシーン中に登場するので、その都度映像の破綻をスキンごとにチェックしなければならなくなります。
また、主人公にスキンを実装したタイミングで過去のカットシーンも全てチェックし直す必要があります。

主人公だと売りづらい
このように非常に手間のかかるスキンの実装ですが、主人公だと有料で販売しづらいという問題があります。
先述のペルソナや、テイルズオブシリーズのようなゲームでは、全キャラ分まとめて販売しています。
ただし、これらのゲームは最初の時点でユーザーがゲームを買うために7000円以上払うので、事情が異なります。
中国のガチャゲームの場合、ビジネスモデルは基本プレイ無料で、ガチャで売れるキャラクターを作ることが必要であり、そういった主人公以外のキャラクターにスキンを用意する方が収益面で得策といえます。
また、主人公のスキンを有料にすると、反発が起こる可能性もあります。なぜ主人公なのに金を取るのか・・・と。
スキンは性能に影響しないので、不要だと思う人もたくさんいます。
「手間やコストに見合わない」
したがって、これらの3Dゲームで主人公のスキンを実装すると、作業量が増えてしまう一方で、主人公スキン実装による利益はあまり見込めないというジレンマを抱えています。
「ファイナルファンタジー」のシリーズ作品を見てみると、MMOのFF11やFF14以外のナンバリングタイトルでは、防具を変えても主人公の服装は基本的に変わりません。
なぜなら、複数のコスチュームを実装すると非常にコストがかかるためです。
主人公の場合、コストの割にスキン販売による収益があまり見込めない。
これが原因です。
例外もあります。
「スパイダーマン」のゲームには主人公のスキンがたくさんありますが、これらは基本的に全て同じ形状であり、身体にフィットしているため、ボーンを作り直す必要がありません。したがって、たくさん実装してもそれほど手間やコストがかかりません。

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